ハラスメントが問題視される昨今、「新人や若手は褒めて伸ばす」のが常識となりました。ところが最近の若者は人前で褒められるのが苦手な傾向が見られるという指摘も…。会社で良好な関係を築きつつ若者を育てるために、どんなことを意識するのが良いのでしょう。「心理的安全性」という心理学用語と合わせて解説します。
- この記事でわかること
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- 褒められるのが苦手な人の特徴・心理
- 仕事で若者と接するときのポイント
- 若手を褒めて伸ばしたいときの注意点
- 職場環境を良くする「心理的安全性」とは
若者は人前で褒められるのを嫌う?!その理由とは
新人や若手が良い仕事をしたとき、「その調子!」「いい仕事ぶりだったよ」と褒めたくなりますよね。ただし、最近の若者は褒められることに抵抗感を抱くこともあると考えられています。
金沢大学融合研究域融合科学系教授、東京大学未来ビジョン研究センター客員教授の金間大介氏が、著書『先生、どうか皆の前でほめないで下さい: いい子症候群の若者たち』で最近の若者の特徴を指摘しています。
金間教授は自身が講義をする中で、若者たちは人前で褒められることを苦手としていることに気づいたといいます。金間教授によると、若者の心理として「目立ちたくない」「褒められることがプレッシャー」「褒められたことが、他人にどう思われるかとても気になる」という気持ちが強いという特徴が見られます。
- 書籍情報
- 『先生、どうか皆の前でほめないで下さい: いい子症候群の若者たち』
- 著者:金間大介
- 出版社:東洋経済新報社
良かれと思って褒めたはずが、新人や若手を追い込んでしまうのは避けたいものですよね。ジェネレーションギャップはどの時代にも存在するものですので、若者とこれからも一緒に仕事をしていくためにも、適切な接し方を考えていきましょう。
人前で褒められたくない若者の特徴と心理
人前で褒められたくないと考える若者には、下記のような特徴が見られます。
- 人前で褒められたくない若者の特徴
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- 周りと仲良くでき、協調性がある
- 一見、さわやかで若者らしさがある
- 言われたことはやるけど、それ以上のことはやらない
- 人の意見はよく聞くけど、自分の意見は言わない
- 悪い報告はギリギリまでしない
- 質問しない
- 授業や会議では気配を消し、集団と化す
- 浮くのが怖い
- ルールには従う
- 一番嫌いな役割はリーダー
- 自己肯定感が低い
- 競争が嫌い
▼ 引用(東洋経済オンライン「なぜ今の若者は「人前でほめられたくない」のか」2022年3月18日掲載)
特徴としては、協調性がありチームワークを大切にするのが長所といえるでしょう。上司や先輩の話をよく聞き、しっかりと仕事を覚えていく傾向にもつながります。
一方で上司や先輩が、ゆくゆくはプロジェクトを任される人材に育ってほしいと指導をしても、若者本人は「リーダーにはなりたくない」「自己主張はしたくない」と、自分が前に出ることには消極的な傾向があるようです。
会社に必要なのは「心理的安全性」がある環境!
心理的安全性とは組織行動学の中で提唱された心理学用語です。組織の中で自分の考えや気持ちを、誰に対してでも安心して発言でき、拒絶されたりしないと感じられる状態を指します。
心理的安全性が低いと、自分の意見を発信しづらくなります。かといって、心理的安全性の高い環境では意見の対立が起きないというわけではありません。
心理的安全性が高い環境では、同じベクトルを見ながらコミュニケーションし、良好な関係を保ちながら意見をすり合わせることができると言えます。仕事をより良くするためには、活発なコミュニケーションやディスカッションが必要です。心理的安全性が高い職場では有意義な意見交換が交わされやすくなるでしょう。
つまり、心理的安全性が低い環境とは、「意見言ったら頭ごなしに否定される」「他人の意見をバカにする」「意見が対立するやいなやギスギスする」「目標が共有されないまま、平行線の議論が続く」などの特徴が見られます。
若者が人前で褒められるのが苦手だったり、自分の意見を言い辛かったりするのは、心理的安全性が低いことも影響しているでしょう。心理的安全性が高くなれば、周囲に自分がどう思われているかについてネガティブな気持ちにとらわれることも減ってくるはずです。
人前で褒められたくない若者を伸ばす方法
人前で褒められたくない若者を伸ばすコツは、褒め方に注意すること、職場の心理的安全性を高めることがポイントになります。
褒め言葉は具体的に、まずは本人に伝える
人前で褒められたくない若者は自己肯定感が低いという特徴を持ちます。褒められると「えっ?まさか自分が褒められるなんて」と驚くことも。褒め言葉はまずは本人に伝え、受け止める時間を確保しましょう。褒めるときは、どこがどんな風に良かったかを具体的に伝えると、本人も実感しやすくなります。
人前で褒める機会があったら、前もって伝えておく
仕事や会社では、人前で褒めるシーンも出てきますよね。周囲のモチベーションアップのためにも、会議や朝礼などで仕事を褒める習慣のある会社もあるでしょう。そんなときは、前もって本人に伝えておくのが安心です。
いきなり人前で褒められると、「こんなことしてほしくなかった」「どうしよう…」と本人が混乱し、褒められることがネガティブな記憶として残るおそれがあります。「〇〇の仕事がすごく丁寧で助かったから、会議でもそのことに触れさせてもらうよ。みんなも感謝していたしね」など、一言伝えておくだけでも心の準備ができます。
一人を褒めたら、全体にも感謝などを伝える
人前で褒められるのが苦手な若者の心理として、「褒められたことで、周囲がどう思うか不安」「自分だけ目立ちたくない」というものもあります。こうした不安を和らげるには、一人だけを褒めるのではなく、複数人を褒めるのがおすすめです。一人を褒めると同時に「みんなもいつもありがとう」など、全体に向けた言葉を添えるという方法もあります。つまり、一人だけに焦点を合わせるのではないことが重要です。
チーム全体のコミュニケーションを増やす
心理的安全性を高めるためにも、職場のコミュニケーションは大切です。「私が発言したら、〇〇さんは嫌な気持ちになるのではないか」などの不安を和らげるためにも、日頃からお互いを信頼できる関係性を作りましょう。
特に、褒めることをチームの日常的な習慣にすることがおすすめです。些細なことでも構いませんので、チームのメンバーを褒めていきましょう。注意したいのは、褒める対象が偏らないようにできるだけまんべんなく褒めることです。
おわりに:接し方を考慮してジェネレーションギャップを埋めよう
世代によって考え方や価値観はさまざまです。お互い驚くことがある中で、心地よい距離感や接し方を考えていくのがおすすめですよ。
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