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通勤中の寄り道で事故・ケガ!労災がおりるケース・おりないケースの違いとは

通勤災害と労災 お金の悩み
この記事は約9分で読めます。

出勤中に子どもを保育園に送り迎えしたり、スーパーに立ち寄ることはあるあるですよね。用事を済ませている途中に事故・ケガに遭った場合、労災がおりるには通勤災害として認定される必要があります。通勤災害として認定されないケースにはどんな例があるのでしょう。

この記事でわかること
  • 通勤災害と労災に関する基礎知識
  • 通勤災害における「通勤」の意味
  • 通勤中の寄り道で通勤災害が認定されるケース
  • 通勤災害が認定されない寄り道の例

寄り道中の事故・ケガは「通勤災害」に当てはまらない?

労災認定とみなされるかどうかには、複数の条件を満たす必要があります。基本的には労災は業務中の事故・ケガに対して適用されますが、通勤中の事故・ケガはどのように判断されるのでしょう。

まず、労災保険について説明します。労災保険とは、労働者の業務を原因として、ケガ、病気、障害、死亡(業務災害)、または通勤の途中の事故など(通勤災害)が発生した場合に、国が会社に代わって給付を行う公的な制度です。

労働者を雇用する会社は、労災保険への加入が義務付けられています。正社員やパートタイムなど、雇用形態は問われません。保険料は会社が全額負担します。

通勤は業務時間には含まれませんが、通勤途中の事故・ケガは「通勤災害」と呼ばれ、労災認定とみなされます。ただし、通勤途中で寄り道した場合は労災認定されないことがあるので注意しましょう。

通勤災害とは

通勤災害とは、厚生労働省によると「労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害又は死亡」を指します。

通勤災害における「通勤」とは
  • 住居と就業の場所との間の往復
  • 就業の場所から他の就業の場所への移動
  • 住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動

上記を満たし、合理的な経路及び方法により行う移動が、通勤とみなされます(業務の性質を有するものを除く)。ただし「移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合には、逸脱又は中断の間及びその後の移動は「通勤」とはなりません」と定義されています。

つまり、業務のために自宅から会社などに向かうこと(出勤)、業務が終了したために会社などから自宅に向かうこと(退勤)は、通勤とみなされます。あるいは、会社から取引先へ移動することも通勤です。「住居」とは、「労働者が居住して日常生活の用に供している家屋等の場所」を指します。

さらに、「被災当日に就業することとなっていたこと、又現実に就業していたこと」も必要です。これは、たとえば会社に忘れ物をした人が、忘れ物を取りに行くために、休日に自宅から会社へ向かう途中で事故に遭ったとしても、通勤災害とはみなされません。

従業員の移動が通勤として認められるためには、その移動が業務に関連していることが必須です。とはいえ、通勤中にはちょっとした買い物をしたり、用事を済ませたりすることはよくありますよね。

通勤災害の認定では、「移動の経路を逸脱し、又は中断した場合」は通勤とみなされませんが、すべての寄り道が労災の対象外となるわけではありません。次章からは、寄り道でも労災の対象となるケース・ならないケースを見ていきましょう。

通勤中に寄り道しても労災の対象となるケース

通勤中の事故・ケガが通勤災害として認定されるためには、いくつかの条件が必要でした。基本的に通勤とは、業務に関連していることが求められます。すると、スーパーへの寄り道や仕事終わりの通院の途中での事故・ケガも労災の対象外なのかと心配になりますよね。

労災保険法第7条3項では、「当該逸脱又は中断が、日常生活上最低限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りではない」と定めています。寄り道をしたとしても、その行為が日常生活上最低限度のものであれば、労災の対象となるというわけです。

厚生労働省令で定める逸脱、中断の例外となる行為は以下のように定義されています。

逸脱、中断の例外となる行為
  1. 日用品の購入その他これに準ずる行為
  2. 職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
  3. 選挙権の行使その他これに準ずる行為
  4. 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為

たとえば、下記のような寄り道は労災の対象となる可能性が高いでしょう(個別の判断が必要)。

労災の対象となる寄り道の例
  • 日用品の買い物のためにスーパーやドラッグストアに寄る
  • 病院に通院する・家族のお見舞いに行く
  • 通勤中に駅のトイレに立ち寄る
  • 業務上必要なスクール・職業訓練校への通学
  • 業務上必要な本や資料を購入するために、書店に立ち寄る
  • 子どものお迎えで保育園に立ち寄る
  • 選挙の投票 など

また、クリーニング店への立ち寄りや理容室・美容室、税金・水道光熱費の支払い、市役所に公的書類(戸籍や住民票)を取りにいくなどの行為は、日用品の購入に準ずる行為としてみなされることがあります。

ただし、通勤災害になるのは「合理的な経路に復した後の災害」に限られます。立ち寄ったスーパーの中でケガをした場合、労災保険が適応されない可能性があるでしょう。

独身か既婚者かで通勤災害の労災認定が変わる?

通勤中の寄り道が通勤災害として認定されるかどうかは、労働者が独身か既婚かで判断が異なることもあります。たとえば、飲食店への立ち寄りを例に考えましょう。

独身の労働者は、食事のために飲食店に立ち寄ることは日常生活上必要な行為とみなされ、事故・ケガに遭遇した場合は通勤災害として認定される可能性が高くなります。

ところが既婚者で普段は自宅で食事をしている場合、飲食店への立ち寄りは日常生活上必要な行為とみなされないこともあります。既婚者であっても普段も飲食店で食事を取るライフスタイルの人は、飲食店への立ち寄りが日常生活上必要な行為としてみなされる可能性が高まります。

ただし独身であっても、居酒屋でお酒を飲む行為は日常生活上必要な行為とはみなされません。居酒屋でお酒を飲む行為は、独身・既婚を問わず移動の逸脱・中断にあたりますので、労災認定はおりない可能性が高いでしょう。

仕事終わりの寄り道で労災認定されないケース

通勤の途中で移動の逸脱・中断があった場合、それ以降の移動は原則として「通勤」とはみなされません。たとえば居酒屋に立ち寄った場合、お店を後にしてからの帰路が通勤経路であったとしても、通勤には当たりません。酩酊してケガを負ったとしても、通勤災害にはならないというわけです。

労災と認定されない例
  • 居酒屋に立ち寄った場合(通勤経路にある店であっても、通勤に関係ない行為のため)
  • 業務に関係のない、趣味のための買い物をした場合(日常生活上最低限度の行為とは言えない場合)
  • 趣味のための習い事のために寄り道した場合

ただし通勤災害の認定は、それぞれのケースに応じて総合的に判断されるのが一般的です。買い物の目的や内容によっては労災がおりることもありますので、会社の相談窓口や労働基準監督署に相談するのが安心ですよ。

彼氏・彼女の家から出勤途中に事故・ケガ!労災認定される?

通勤災害における「通勤」とは、「住居と就業の場所との間の往復」を指します。それでは、彼氏・彼女の家から出勤する場合、または仕事終わりに彼氏・彼女の家に向かう途中での事故・ケガは通勤災害としてみなされるのでしょうか。

通勤災害における住居は、「居住して日常生活をする家屋かつ本人の就業のための拠点」であることが求められます。彼氏・彼女の家に寄ることは、一般的には私的な理由ですよね。そのため、労災が下りる可能性は高くありません。また、半同棲中のカップル、もしくは婚約中のカップルでも、住民票や生計が同じでない場合は労災が下りる可能性は高くありません。

ただし業務上の必要があるなど、何らかの理由があり、彼氏・彼女の家に泊まることに合理的な理由が認められる場合、労災として認定されます。たとえば長時間の残業で自宅に帰宅することが困難になったケース、災害などで電車が停まったために外泊しなくてはならなくなったケースなどです。

通勤経路とは異なるルートで帰宅中にケガ!労災は下りる?

ここまでで説明してきたように、通勤中のケガなどで労災認定を受けられるかどうかは、下記に当てはまることが基本条件です。

  • 住居と就業の場所との間の往復
  • 就業の場所から他の就業の場所への移動
  • 住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動

会社によっては、自宅から就労場所までの通勤経路を提出する必要がありますよね。自宅から最寄り駅までの徒歩経路、電車の乗り換えなど詳細を提出することを求められることもあるでしょう。「提出した通勤経路でなければ通勤災害が認定されないのだろうか」と不安に思う人もいるかもしれません。

会社に提出した通勤経路とは異なるルートで通勤していたとしても、通勤災害は認定されます。ただし、どんなルートでも良いというわけではありません。その経路及び手段が、合理的なものであるかどうか、という点が総合的に判断されます。仕事に関係のない寄り道をした場合は、合理的な経路とはみなされません。

さらに、会社に提出していた通勤経路とは異なるルートで出勤・退勤していた場合、通勤交通費の不正受給が疑われます。会社に対して、従業員が詐欺をしているケースです。

自宅から会社まで複数の経路がある場合、遠回りで交通費が高いルートを会社に申請し、実際は交通費が安いルートで通勤していたとすると、差額分を多く手に入れることができます。あるいは電車通勤で申請していたのに、実際は自転車で通勤していた場合も同様です。

労働者は会社に虚偽の事実を伝え、余分に通勤交通費をもらっていたことになり、刑法上の詐欺罪が成立します。

通勤災害が認められるかどうか相談窓口はどこ?

通勤中の事故・ケガは、寄り道をしていても通勤災害として認定され、労災がおりる可能性があります。そのためには必要な請求をしましょう。

また、労働者が労災保険による補償が受けられる場合で、労働者が仕事を休業しなければならないほどの労働災害に遭った場合、会社もまた労災事故について労働基準監督署に届ける必要があります。もしも会社が届け出をしない場合、会社は「労災かくし」という法律違反を犯したことになるのです。

通勤中の事故・ケガについて労災請求をするとき、会社が協力的でなかったり、一方的に「労災はおりない」と主張する場合、まずは地域の労働基準監督署に相談しましょう。

また、「労働条件相談ほっとライン」に相談してみるという方法もあります。

労働条件相談ほっとライン(フリーダイヤル:0120-811-610)
労働基準関係法令に関する問題について、専門知識を持つ相談員が対応する無料の電話相談窓口。法令・裁判例などの説明や各関係機関の紹介などを行ってくれる

おわりに:通勤中の寄り道で事故・ケガに労災がおりるかはケースバイケース

通勤中にお店などに立ち寄ることはよくあることですが、その際の事故・ケガに労災がおりるかは総合的に判断されます。もしものときは会社の人事部や各相談窓口を頼ってくださいね。

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