成長期や思春期は子どもから大人へと成長していく段階のため、身体や脳が成熟していく時期です。特に食事はとても重要で、栄養バランスの偏りや朝食の欠食が問題視されています。この記事では食事が子どもの成長にどんな影響を与えるか解説し、特に朝食の重要性を説明します。
- この記事でわかること
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- 偏った食事による肥満ややせすぎの悪影響
- 子どもが朝食を欠食したときの問題点
- 時間がなくても朝食を作りやすくなるコツ
子どもの肥満・やせすぎは心の健康にも影響する?
子どもにとって食事とは、単なるエネルギー補給のためだけのものではありません。具体的には、以下のような役割があると考えられています。
- 心身の発育、発達に関わる
- 心身の健康をつくり、保つ
- 食文化を伝える
- 一緒に食事を摂ることで友達同士の絆、家族間の絆を深める
- 感性を育てる
このように、過不足のない適切な食生活は子どもの心身を健康に保ち、健全な発育・発達を促してくれます。一方で、日本の現状はどうなっているのでしょうか。厚生労働省の「国民栄養調査」によれば、1976年〜2000年にかけて6〜14歳の子どもにおける肥満の割合を見ていくと、男女ともに9〜11歳で最も増加しています。
1996〜2000年には、9〜11歳の男子で15%、女子で12.2%が肥満となっていて、他の年齢でも肥満児の割合は8〜10%、特に男女とも12〜14歳では目立った増加が見られないものの、6〜8歳の肥満児は年々増加しています。さらに、12歳男子の肥満の程度別に総コレステロール値や血圧の状況の関連をみた調査結果によると、肥満群では正常群と比べていずれも高かったとわかっています。
肥満が健康に悪いことはもちろんですが、肥満だけでなくやせすぎもやはり健康には悪影響です。平成14年度に行われた「思春期やせ症」についての全国規模の調査によれば、中学1年〜高校3年までの思春期やせ症の発症率は2.3%、さらに、成長曲線を一定の基準以上に外れるような急激なやせ方である「不健康やせ」も、中学3年で5.5%、高校3年で13.4%見られました。
やせすぎは肥満と異なり、その危険性についてつい大人も子ども自身も見過ごしてしまいがちですが、やせすぎは下記のようなデメリットがあります。
- 心の問題にも密接に関係している
- 骨量が減少する
- 不妊など将来的な健康に深刻な影響をもたらすことがある
このように、やせすぎは思春期の子どもにとって見過ごせる問題ではありません。
特に女子の痩身願望は年々強くなっているとされ、自分の体型に対して「やせたい」と思っている女子の割合は小学5〜6年生で約5割、高校生では約9割にものぼっています。前述のように、実際に肥満でやせることが推奨される子どもの割合と比べると、特に問題のない体型の子どもまでも痩せたいという願望を持っていることがわかります。
15〜19歳の女子では、体型に対する自己評価について平成10年と平成14年を比較すると、現実の体重が「普通」や「低体重(やせ)」でありながら、「太っている」と思い込んでいる子どもが増えていることがわかりました。しかも、「太っている」と評価する理由は「他人と比べて」が65.8%と約3分の2にものぼります。
15〜19歳は中学〜高校生、大学生という思春期に当たる時期ですから、どうしても他人と比べたり、異性からの視線が気になったりしてしまうのは仕方がないことですが、成長曲線からあまりに外れてしまうような不健康なやせ方も、自分の体型に対して必要以上に太っていると思い込んでストレスを溜め込むことも、心身の健やかな発育のためには大きな問題です。
子どもの肥満もやせすぎも、適切な食生活を送れていないことが主な原因として考えられます。
- 栄養バランスが偏っている
- 朝食や夕食を抜いている
- 朝・昼・晩の食事をきちんと食べず間食ばかりしている
- 極端なダイエットをしている
上記の食習慣を続けていると、肥満ややせすぎといった不健康な状態に陥りやすくなってしまいます。特に、朝食を食べない子どもの問題は近年、大きな問題となっています。次章では、子どもにとっての朝食の重要性についてみていきましょう。
育ち盛りの子どもが朝食を食べないとどうなる?
朝食を食べない子どもは、年々増加傾向にあります。2010年ごろまでは一時期減少していたのですが、2013年度を境に増加に転じ、2018年度には中学生で8.0%、小学生で5.5%にものぼりました。さらに、過去の調査によると朝食を食べない理由は小・中学生ともに「食べる時間がない」「食欲がない」の順に多く、それぞれ約4割ということもわかっています。
同じ調査によれば、子どもが朝食を食べない原因と睡眠リズムが関係しているのではないかと示唆されています。これは、毎日同じくらいの時間に寝ていない(睡眠リズムが不規則な)小・中学生ほど、朝食を食べない傾向にあるためです。つまり、朝食を食べる時間がないのも、食欲がないのも、睡眠リズムが不規則なため起きる時間が遅かったり、空腹を感じられなかったりするためではないかと考えられるのです。
加えて、朝食を摂っているという小・中学生であっても、その内容は野菜の摂取量が極めて少なく、「パンと飲み物」や「ご飯とふりかけ」のように、栄養が非常に偏った内容となっているケースが多く見られました。このように糖質が多く、タンパク質やビタミン・ミネラルが少ない食生活は容易に貧血を招き、午前中に発生するだるさや原因不明の体調不良などを覚えやすくなります。
- 朝食を食べる時間がない
- 食欲が湧かない
- 睡眠リズムが不規則で、食事に影響している
- 朝食の栄養バランスが偏っている
朝食を抜く、朝食を食べられない子どもには、上記のような理由があるかもしれません。
朝食を抜くと学力や集中力の低下につながるかも!
前述のように、朝食を食べない子どもが増えていて、その理由は睡眠リズムの不規則さとの関連性が指摘されていますが、朝食を食べることは子どもにとって非常に重要なことです。主に以下の3つのポイントから、朝食の重要性を見直していきましょう。
- ①体のリズムを整える
- 朝食は、1日を始めるための力の源です。朝食を摂らないと、給食を食べるまで元気が出てこないこともあります。すると、給食が1日の食事の始まりとなって生活リズムも乱れ、夜に向かって元気になります。夜更かしする悪循環に陥ることもあります。
- 対処法
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- 毎朝決まった時間に朝食を摂り、朝から1日が始まる生活リズムを整えましょう
- ②やる気や集中力を引き出す
- 朝食を摂るとすぐに体温が上がり始め、午前中から体温が上がった状態になります。<一方、朝食を摂取しないと体温が上がりにくくなります。人間は体温が下がると眠くなるので、午前中の授業は眠い状態で受けることになります。
- 対処法
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- 朝食を食べて体温を上げると、授業中の眠気が改善されるでしょう
- ③脳に十分なエネルギーを補給する
- 人間の脳に必要なエネルギーの源はブドウ糖ですが、眠っている間に失われます。朝食でブドウ糖を摂取しないと、夕食から給食まで12時間以上も時間があいてしまいます。すると脳が栄養不足になり、集中力の低下、イライラなど情緒不安定に陥りやすくなります。
- 対処法
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- 集中力アップや心の落ち着きのため、朝食でブドウ糖を補給しましょう
このように、朝食を摂らないと給食を食べるまで眠かったり、イライラしてしまったり、集中力が低下したりして、午前中の授業をしっかり受けられない可能性が高いと言えます。実際に、文部科学省の調査によれば、「朝食をしっかり食べている子」「どちらかといえば食べている子」「あまり食べていない子」「全く食べていない子」の学力調査の平均正答率は、朝食を食べる頻度が減少するほど下がっていったとするデータもあります。
もちろん、朝食を食べることがそのまま学力に直結するわけではありませんが、朝食を食べなかったために午前中の授業に集中できないことは、子どもの学力を下げてしまう原因の一つなのではないか、と考えられそうです。栄養バランスのとれた朝食をしっかり食べ、脳や身体にしっかりエネルギーを補給しましょう。
忙しい朝でも子どもの朝食を準備するコツ
子どもの朝食欠食は、子どもの成長にデメリットを及ぼします。しかし朝の時間は大人にとっても大切ですから、朝から手の込んだ料理を用意できないご家庭も多いでしょう。しかし、大切なのは栄養バランスが整っていることであり、手間がかかっているかどうかではありません。短い時間で栄養バランスの整った朝食を用意するためには、以下のようなポイントを心がけるのが良いでしょう。
- そのまま食べられるものや、火の通りが早いものを常備しておく
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- 納豆、豆腐、ハム、ちくわ、かまぼこ、ツナ缶、きゅうり、レタス、チーズ、ヨーグルトなどはそのまま食べられるので手軽
- 卵、キャベツ、ほうれん草、ウインナー、もやしなどは火の通りが早い
- 切るだけ、茹でるだけ、炒めるだけなど調理法をシンプルにすると簡単に準備できる
- みかんやバナナなど、子どもでも簡単に皮をむいて食べられる果物もビタミン・ミネラル補給におすすめ
- 残り物や作り置き、冷凍食品を活用する
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- 前日の夕食の残り、作り置き惣菜、レンジで加熱するだけの冷凍食品なども活用する
- 朝からご飯を炊くのが難しければ、多めに炊いて小分けに冷凍しておき、朝は解凍する
- ワンプレートで洗い物を少なくする
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- ご飯とおかずを一皿に乗せてしまえば洗い物も減らせる
- 米粉パンや全粒粉パンを活用
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- 米粉パン、全粒粉パン、ライ麦パンなどはGI値が低く、血糖値の乱高下になりにくい
- ハムやツナ、レタスやトマト、きゅうりなどを挟んだり、ヨーグルトと合わせたりすれば栄養バランスが整う
- 食事量が少ない子なら、食べられる量の朝食を準備する
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- ご飯と納豆、ご飯と味噌汁など、食べられる量からスタートする
- 朝食に慣れてきたら、冷奴、卵焼き、ヨーグルトなどタンパク質を増やす
- 夕食の時間が遅い場合は、夕食の時間を早めたり、寝る前には食べないと決めたり、早寝する
パンを使ったサンドイッチやトーストなどは忙しい朝の強い味方ですが、糖質過多になりやすい点が心配です。パンでも真っ白な食パンではなく、米粉パンや全粒粉パンを使うことで糖質を低く抑えられ、ビタミンやミネラルを摂取しやすくできます。ヨーグルトや牛乳、卵を合わせて不足しがちなタンパク質も補うのがポイントです。
後編はこちら
おわりに:子どもの食事は1日3食栄養バランスの整った内容がおすすめ
子どもにとって、食事は健康な体づくりだけでなく、学力や情緒の安定にも役立ちます。特に朝食を欠食してしまうと、午前中は体力と気力が湧きません。朝は大人も忙しいため、手抜きや工夫をしながら朝食を準備してみてくださいね。後編では、子どもの給食の栄養バランス、最近話題の「こども食堂」について説明していきます。
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