顔のほてりや赤みは人から指摘されることもあり、コンプレックスとして悩んでいる人は少なくありません。
前編では病院の治療法を説明しましたが、この記事では治療法のほかセルフケアも紹介します。40代~50代の更年期障害が気になる女性や、日焼けによる赤みに悩んでいる人も参考にしてみてくださいね。
- この記事でわかること
-
- 酒さの赤みを改善するセルフケア
- 更年期ののぼせや顔の赤みの対処方法
- 日光の刺激などから皮膚を守るポイント
酒さによる顔の赤みをセルフケアで改善する方法
酒さの症状をセルフケアで改善するためには、食生活とスキンケアが重要です。
- 赤ら顔の人が避けたいもの
-
- アルコールやタバコ、カフェインなどの嗜好品や、香辛料などの刺激物
- 洗顔のしすぎなど肌に負担をかけるスキンケア
刺激の強いものは避けるのが基本ですが、スキンケアも同様です。スキンケア用品は肌に直接つけるものですので、刺激はダイレクトに肌に影響を及ぼします。収れん用化粧水など一部の基礎化粧品にはアルコールが含まれているため、成分をよく確認してアルコールの使われていないものでケアしましょう。
また、洗顔のしすぎやゴシゴシ洗いは肌に負担をかけ、赤ら顔を悪化させる刺激になってしまいます。洗うときには手の摩擦を避けるよう、たっぷりの泡でやさしく洗いましょう。
更年期のホットフラッシュの治療法やセルフケア法って?
ほてりは、更年期障害の症状の一つ(ホットフラッシュ)として現れることもあります。
- 更年期障害のホットフラッシュの症状
- 典型的なホットフラッシュの現れ方は、胸のあたりから上半身にかけて、突然強い熱感が広がるものです。発汗や動悸を伴うことも多く、汗の程度はじんわりと汗ばむくらいから滝のように汗が吹き出るというものまでさまざまです。頭や首の後ろなど、普段あまり汗をかかないところに汗をかくのが特徴です。
ほとんどのホットフラッシュは数分でおさまりますが、その後急に身体が冷え、ぞくぞくとした寒気を感じることもあります。回数は数日に1回から1時間に1〜2回と頻繁に出現することもあり、緊張したときや感情がこみ上げてきたときに起こりやすいです。睡眠中に起こることもあり、重度になると夜間に何度も寝間着を着替えなくてはならなくなることもあります。
なぜ更年期にほてりの症状が起こりやすくなるのか、詳しい原因はよくわかっていません。ただし、女性ホルモンが低下すると起こりやすくなり、女性ホルモンを補う治療を行うと劇的に改善することがわかっています。若い女性の無月経でも女性ホルモンが低下しているのに、更年期にだけほてりが現れるのは、二次的に自律神経が不安定になることが関係していると考えられています。
更年期障害とよく間違えられやすい疾患に、甲状腺機能亢進症があります。この疾患では身体全体の代謝が亢進しますので、発汗や動悸が見られるのが特徴です。他にも、女性ホルモンの低下とは関係のない原因による自律神経失調症でも同様の症状が見られますので、更年期障害のほてりだと診断するためには、年齢・月経の状態・女性ホルモンの血中濃度などを調べて更年期にさしかかっていることを確認するとともに、他の疾患の可能性を除外する必要があります。
更年期障害の治療法
更年期障害のほてりは月経が不順になるころから出現し、閉経前後にピークがあり、閉経後1年くらいでおさまってくるケースが多く、中には10年以上続く場合もありますが非常に稀です。日常生活に支障がない程度の症状なら、放置しておいても構いません。程度が強く、日常生活に支障をきたす場合は、以下のような治療を行います。
ホルモン補充療法(HRT)
不足している女性ホルモンを補充する方法で、ホットフラッシュに効果的な治療法とされています。ただしこの治療法が適さない人もいるので、必ず専門医の診察を受けて処方してもらうよう注意してください。
- HRTの薬の種類
- 内服薬・貼り薬・ジェル剤など。貼り薬・ジェル剤には肝臓代謝がなく、副作用を軽減できることからよく使われています。子宮がある人はエストロゲンを単体で補充すると子宮がんを発症するリスクがあるため、プロゲステロンを併せて投与します。更年期障害の症状だけでなく、骨粗鬆症や高脂血症の予防にも効果的なので、長期的な健康の視点からもメリットが大きい治療法です。
- 副作用
- 副作用として血栓症のリスクがやや上がるため、喫煙者や肥満の場合はHRTが行えないこともあります。
漢方薬
漢方薬は東洋医学の治療法で、西洋医学で使用する薬や手術とは異なり、自然界の植物などの薬効で症状の緩和を目指します。気・血・水の漢方学的観点から、患者さんの「証(体質)」と合わせて適切な漢方薬を選び、処方されます。
- 漢方薬の種類
-
- 気の不調(気滞・気虚)から来る場合は加味逍遙散、瘀血から来る場合は桂枝茯苓丸
- ほてった身体を冷ます「白虎加人参湯」は即効性があるため、頓服での服用が勧められる
抗うつ薬
抗うつ薬のSSRI、SNRIなどは、ホットフラッシュに効果があることがわかっています。HRTが使えない場合やうつ症状を伴っている場合などに処方されます。
非薬物療法
薬や漢方を使用しない治療法には、臨床心理士や心理カウンセラーによる心理療法やカウンセリングがあります。詳しい問診で、ホットフラッシュを引き起こす根本的な原因を探し出し、個々の生活習慣の改善、運動療法などでホットフラッシュの軽減を試みる治療法です。
ホットフラッシュ対策とセルフケア
ホットフラッシュが起こったときのために以下のような対策ができます。
- 脱ぎ着しやすい服
- ホットフラッシュが起こると、熱を外に逃がそうとして汗をかくきます。服の中で熱がこもると汗が引かなくなるので、通気性の良い服や着脱しやすい服がおすすめです。
- 暑さ対策、汗対策のグッズを持ち歩く
- ホットフラッシュは熱がこもっている状態なので、暑さや汗対策グッズで身体を冷やしましょう。保冷剤や冷感スプレー、汗拭きシートなどを常備しておくと安心です。
ホットフラッシュが起こった日時やシチュエーションを記録しておくと、再発するタイミングを予測することができます。発症したら、すぐスマートフォンや手持ちのメモなどに記録しておきましょう。こうした記録は医師の診察時に症状や状況を説明するときにも使えますので、こまめな記録が大切です。
また、ホットフラッシュの予防として、以下のようなセルフケアを行うのも効果的です。
- 食事メニューに気をつける
-
- イソフラボンというエストロゲンに似た成分を含む「大豆」を積極的に摂取する
- 大豆イソフラボンは食べてから約1〜2日で対外へ排出されるため、毎日摂取する
- 自律神経を整える
-
- ストレスを適度に発散したり、リラックスできる時間を作ったりして副交感神経を働かせる
- 辛いことを家族や友人に相談したり、日常のたわいないことをお喋りしたり、音楽やストレッチ、軽めの運動など、自分が楽しめることをする
- 心身の解放感を感じられると自律神経が整いやすいため、できれば身体を動かすことだとより良い
- 負荷をかけた筋肉トレーニング
-
- 2019年に発表されたスウェーデンの研究で、週3回程度の筋力トレーニングが中程度〜重症のホットフラッシュの頻度を減らすことがわかった
- スキマ時間を利用し、筋力トレーニングをするのがおすすめ
日焼けなどが原因の赤みに対するセルフケア
日焼けや気温の変化など、病気ではなくても環境的な要因で顔がほてったり、赤くなったりすることがあります。
- 日焼け・光線過敏症
- 太陽光に含まれる「紫外線」を浴びると、皮膚が軽いやけど状態になります。日焼けした数時間後に皮膚が赤くなり、ヒリヒリした痛みを感じます。顔や体に熱を感じることも多く、ひどいときには発熱に至ることもあります。また、内服している薬の副作用で起こるケースにも注意してください。
- 気温の変化
- 人間の体は熱いときに身体から熱を逃し、寒いときに熱を生み出して体温を調節するようにできています。急激な気温の変化や暑すぎるときには、体温調節がうまくいかず身体が熱をもってしまうのです。
- 緊張やストレス
- 人前に立つときなど、過度な緊張やストレスにさらされて交感神経が優位になります。交感神経が優位になると心臓が強く早く脈打ち、血管が収縮する働きが強まり、ドキドキしたり顔が熱くなったりします。
このような原因で顔の熱さや赤みが生じた場合、以下のような方法で対処しましょう。
- 日焼け・光線過敏症の場合
-
- 皮膚が赤く炎症を起こしたときは、炎症を抑えるため患部を水や氷ですぐ冷やす
- 気温の変化に対応するには
-
- 急にほてりが生じても調整できるよう、脱ぎ着しやすい衣類で過ごす
- 下着や寝巻きは、通気性・吸水性・速乾性に優れた綿素材で身体を締めつけないものを選ぶ
- 強い緊張やストレスを感じたら
-
- 深呼吸し、少しずつ身体の力を抜いていくようにする
- 首や肩、背中、腰や脚などをマッサージし、筋肉の緊張をほぐして血行を良くするのも効果的
- 自律神経のバランスを整え、鎮静作用が期待できるアロマの香りをかぐのも良い
一時的な緊張やストレスによるほてりで体調不良にまで至ることはまれですが、日焼けや気温の変化の場合、体調不良に陥ることもあります。もし、上記のような対処法を行っても顔や身体のほてりが治らない場合や、他の症状が出てきた場合には、早めに病院を受診しましょう。
また、上記のようなほてりが出る前に、以下のような予防法を実践しておくのもおすすめです。
- 日焼けによるほてりを防止する
-
- 不必要な日光浴は避け、屋外で活動するときには帽子や長袖、長ズボンを着用する
- 急激に大量の日光を浴びるのを防ぐため、日傘や日焼け止めなどを活用するのもおすすめ
- 海水浴など真夏の炎天下で長時間過ごす場合は、SPFの数値が高い日焼け止めを使い、効果を持続させるために何度か塗り直す
- 暑い日に活動するときの注意点
-
- 汗で水分が失われやすいため、水分をこまめに摂取する。塩分・糖分摂取は適度に!
- 室内では適切に空調を使い、気温や湿度が高くなりすぎるのを防ぐ
- 通気性の良い衣類や下着を着用し、熱がこもらないようにする
- 顔や身体が熱いと感じたら首元や脚の付け根、脇の下など太い血管が通っている部分を冷却シートや冷水など冷たいもので冷やす
- 自律神経やホルモンの乱れを整えよう
-
- ストレスや疲れを上手に解消し、自律神経のバランスを保つよう心がける
- 適度に身体を動かすことは気分転換にもなり、心地よい睡眠を招く
- ウォーキング・サイクリング・水泳・ヨガなど、無理せず楽しみながらやれる有酸素運動を行う
- 寝る前に38〜40度のぬるめの湯船につかると、心身の緊張がほぐれて寝つきがよくなる
- 日頃からこまめに水分を摂取し、水分不足にならないよう気をつける
暑い日や紫外線が強い日にほてらないよう予防することも重要ですが、それと同じくらい日頃から適度に身体を動かしたり水分補給を忘れないようにしたりして、自律神経やホルモンのバランスを整えることも重要です。自律神経やホルモンバランスを整えることは更年期障害によるほてりの症状を軽減するのにも有効ですから、ぜひ無理のない範囲で実践していきましょう。
前編はこちら
おわりに:
赤みの改善は病院での治療が必要なこともありますが、セルフケアで症状緩和を目指すのもおすすめです。更年期障害や自律神経失調症などの場合、日頃から食生活や運動などの生活習慣を見直し、ホルモンや神経のバランスを整えるセルフケアが重要です。ぜひ、できることから実践していきましょう。
コメント